2児の年子をもつ新米数学者によるドタバタ育児日記

就職初年度で早くも2児の親になりました.予測不可能な人生って楽しいですね.

下の子かわいくない症候群(2)

前回(下の子かわいくない症候群(1))からの続き:

chisuke0831.hatenablog.com

 

自身が下の子をかわいくないと自覚するまで,そして自覚したときのことを書き残しておきます.

 

自覚するまで

自身が所謂「下の子かわいくない症候群」にかかっていると自覚したのは,我が家に赤ちゃんが来てから一ヶ月ほど経った頃,三日連続で夜泣き対応をしたときだと思う.

新たな家族の一員として赤ちゃんを迎え入れてから数日の間は

「あの頃の夜泣きをまた耐えなきゃいけないのかぁ.でも赤ちゃんは可愛い!辛いけど頑張ろう!(ワクワク)」

と張り切っていた.
けれど,世話をすればするほど

「あれ?何か違う....一人目の時と何かが違う....」

と違和感を抱く.
そしていつの間にか

「こいつ煩わしいな.泣かれる度にイライラする.」

なんてことを思うようになっていた.
だけど,そんなことを口に出せる訳もなければ,自分よりも赤ちゃんの世話をしている妻に伝える訳にもいかず.

「自分,オカシクなってしまったのか!?何なんだ!?訳わからんぞ!?上の子はこんなにも可愛いのに!!本当の自分はこんな人間だったのか...???」

と混乱しながらも,赤ちゃんと向き合う毎日.
いや,今思えばちゃんとは向き合えていなかったろうし,向き合う気力さえ無かった気がする.

そして,ハッキリと下の子をかわいくないと自覚した日が訪れた.
我が家に赤ちゃんを迎え入れて約一ヶ月後,連続で夜泣き対応をした三日目の深夜のことである.

 

自覚したとき

何をしても泣き止まない.
ミルクをあげようにも,飲まずに吐き出される.
オムツは既に交換済み.
そもそもさっきの交換で下痢をお見舞いされたばかり.
抱っこしても,まるで拒絶するかのように,激しく頭や腕,足を動かされる.
最初の頃は

「一人目と比べれば全然耳にこないねー!」

なんて妻と笑い合っていたはずの夜泣きの声が,頭に猛烈に鳴り響く.
泣き顔を見れば見るほど,不満を訴えているかのように見えてくる.
必死に文句を垂れているようにも見える.

私は,もう無理だと感じてしまった.
「もう無理だ」という言葉以外に,どんな感情が今の自分に当てはまるのか,冷静に考えるような心のゆとりは無かった.

一体こいつは何が不満なんだ.
こっちは何の仕事もできず,本当に色々な不安と焦りに襲われているのに.
まだ任期付きの職なんだ,研究をし続けて,成果を出して次の就職先を見つけなければ,家族全員が路頭に迷うことになるんだ.
これだけ自分の時間を犠牲にして世話しているのに.
なのに何故お前はそんな軽々しく泣ける.
何故そんな嫌そうな顔をして大声出して泣ける.
毎日どんな思いで必死に生きて働いているのか分からないくせに.
お前は寝れて良いよな,それが仕事なんだから.
こっちは寝れないんだよ,寝たくてもお前のせいで.
なぁ,どうすれば良い.
どうすれば満足する.
どうすれば黙ってくれる.
教えてくれよ,頼むから.

不安,焦燥感,やるせなさ,悲しさ,虚しさ,絶望感,その他言語化できないような感情の渦に両足を囚われて,身動きが取れなくなっていた.
負の感情の乱流に飲み込まれて,急に極値へと到達するようだった.
もちろん,自身の状況を客観的に把握できるはずもなかった.

不意にピークが訪れた.
私は,腕で大泣きしている赤ちゃんを布団に放り投げた.
そして赤ちゃんに向かって吐露した.

「もう無理だ,俺にお前の父親なんて.勝手に一人で泣いててくれ.もう知らん,解放してくれ.一体どうすれば良い,何を間違えた.何も分からない.お前のことは何も可愛くない.」

 

自覚したあと

10分程経ってから冷静さを取り戻し,泣き止むことのない赤ちゃんを抱き上げ,「ごめん」の一言と共にベビーベッドに寝かせた.
そして,自己嫌悪と謝罪の念に駆られた.
見た目に怪我は無いとしても,もし頭や脳に問題が起きていたら...

自分は最低な親になりかけているのだと感じた.
こんなことを続けたら,虐待に繋がってしまうかもしれない.
それは絶対にダメだ.
でも,そんなことは自分でもよく分かっている,
分かっちゃいるんだそんな当たり前のことは.

しかし,当時の私は,理性と感情が分断されているようで,もう何をどうすれば良いのか分からなかった.
このやり場のない感情を,一体どう処理すれば良いのか,途方に暮れていた.
本当に苦しかった,辛かった.
家族も友人も知り合いもいない見知らぬ土地で,新型コロナの影響で自宅に籠もりっきり.
仕事をしなければ,研究をしなければと思えば思うほど,泣き声が頭に突き刺さり,本当に,本当にオカシクなりそうだった.

数日後,家族で近くの神社に気分転換として散歩していたとき,意を決して妻に告げた.

「俺,下の子が全然かわいくない.」

 

 

長くなるので,「下の子かわいくない症候群(3)」へ続きます:

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